内容
1.はじめに:
2.出願件数と知財担当者数との関係からみた適正な知財要員数について:
2.1 知的財産活動調査とは?
2.2 標本数の推移
2.3 知財要員数(積み上げ値)
2.4 1社あたりの知財部員数の平均は6.0人
3.おわりに:
1.はじめに:
スタートアップの中には、成長していくにつれて、着実に特許出願や商標件数を伸ばしていく企業があります。
起業当初は知財担当者を設けることは稀であり、起業から数年の段階では法務担当者や技術統括担当者などが、知財業務を兼ねるケースも多いはずです。
その後、成長に合わせて、知財専任担当者を置き、場合によっては、複数人で知財のポートフォリオを管理するようになり、やがて法務部や技術統括部など、名称は様々かもしれませんが、いわゆる知的財産部という組織にまで拡大しくことが、1つのシナリオかもしれません。
知的財産部という組織が構成される頃には、相当大きな企業体組織となっているはずです。
その知財部門をマネージングする方にとって、適正な知財要員数はどの程度なのか?という点は、興味深い点であり、悩みのタネかもしれません。
今回は、知財要員数について考え見てみたいと思います。
2.出願件数と知財担当者数との関係からみた適正な知財要員数について:
本ブログでは、特許庁が毎年公開する知的財産活動調査の結果を活用しました。
2.1 知的財産活動調査とは?
特許庁では、我国の知的財産政策を企画立案するにあたっての基礎資料を整備するため、知的財産活動の実態を把握することを目的として、平成14年度から毎年「知的財産活動調査」を実施しています[i]。
調査実施年の2年前の1年間に「特許出願、実用新案登録出願、意匠出願、商標出願」の出願実績がある出願人を調査対象としています。
今回は、開示データの中で、知的財産担当者数に焦点を当てて整理してみました。
2.2 標本数の推移
図1は、出願件数別の標本数の推移をグラフ化したものです。
知的財産活動調査は、3年に一度、「悉皆調査(甲調査)」・「サンプル調査(乙調査)」を行う大規模調査と、その間の2年は「悉皆調査」のみ行う調査方法を採用しています。
これにより、出願件数が1-5件未満は標本数が不連続となり、全体の標本数も同じ傾向となっています。
ただ、標本全体の年平均成長率(CAGR)は0.4%であり、不連続の点を除けばグラフには大きな変化はないため、ほぼ毎年同じ程度の有効標本数が得られていると考えられます。
【図1】
図1の成長率(CAGR)の結果より、出願件数5-10件未満の標本数は+1.5%を示しており、企業数は増加しています。
一方、出願件数が50件超の標本数はいずれもマイナス成長であり、これらの企業数は減っています。
特許出願のみでの結果ですが、以前のブログで、直近10年の出願数の成長率はマイナス0.6%と紹介しており、この結果とも対応していますね。
2.3 知財要員数(積み上げ値)
図2は、有効標本数に対応する、知的財産担当者の積み上げ値の推移をグラフ化したものです。
各年度の数値は、「有効回答標本の積み上げ集計値」を示しています。
【図2】
図2のCAGRより、出願件数が5-10件未満の成長率が1.3%、10-50件未満が2.1%となっており、少なくともこの範囲では、知財部員の積み上げ値は増加傾向にあります。
2.4 1社あたりの知財部員数の平均は6.0人
図1と図2から、知的財産担当者数の1社当りの平均値が計算できます。
図3は、その推移を示したものです。
【図3】
図3より、出願数10件以上の企業は、いずれも成長率がプラスであり、知財要員数を増やしていることが分かります。
注目は、100件を超えた企業でも知財担当者数を増やしている点です。
図2で示した通り、近年は大企業は出願数を厳選する傾向にありました。
出願数との対比のみで知財要員数を考えると、この結果は対応していませんよね。
この結果、みなさんなら、どのように解釈しますか?
近年の知的財産部は、従来の知的財産の創作支援や管理を中心としたものから、機能が大きく拡大してきています。
そのため、出願数を絞り込んだからといって、その分だけ知財担当者を減らすという単純なものではなく、むしろ増員して、より幅の広い仕事を担当するようになってきている、と考えましたが、いかがですか?
(ご参考:出願件数別の知財要員の平均値)
今回の結果では、1社当りの知財担当者数の平均値を算出しています。
あくまで平均の値になりますが、全社の平均は6.0人でした。
出願別にみると、以下の通りです。
5-10件未満は1.4人
1-50件未満は3.5人
50-100未満は9.1人
100件以上は39.2人
これらの値は、皆さんの肌感覚と比較してどうでしょうか?
3.おわりに:
図3では、10-50件未満の企業が、成長率が2.2%と最も高く、知財要員平均値を上げるドライバーになっています。
企業の成長に合わせた知財要員数の検討と、知財部の機能拡大の検討は、様々な業務を抱える知財部門の統括者にとって、悩みが尽きない問題の1つかもしれません。
今回のブログが、知財活動検討のための参考になりましたら幸いです。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。
【参考文献】
[i] 知的財産活動調査 | 経済産業省 特許庁
https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/chizai_katudo/index.html