内容
1.はじめに:
2.「ふるさと納税」の裏にある構造課題を解決するビジネスモデル特許
2.1 「ふるさと納税」が抱える課題
2.2 解決の鍵は “テクノロジー×地域経済”
2.3 その仕組み, 実は特許とってます
2.4 ビジネスとしてどう成立してる?
3.おわりに:
1.はじめに:
“ふるさと納税”って、うまく使えていますか?
制度としては大成功?寄附者にとってもお得感たっぷり? でも、
その仕組みを支える生産者と自治体には、なかなか見えない“負担”があるのをご存じですか?
今回は、そんな社会課題を解決すべく開発され、
実際に特許(ビジネスモデル特許)まで取得されたある仕組みをご紹介します。
2.「ふるさと納税」の裏にある構造課題を解決するビジネスモデル特許 [i] [ii] [iii]
2.1 「ふるさと納税」が抱える課題
「ふるさと納税」は、地域の名産や特産品を返礼品として受け取れる制度ですが、今回ご紹介する発明が検討される頃は、次のような理由から、小規模な生産者は参入しづらい構造になっていました。
送料が重くのしかかる(特に低単価商品の場合、利益が圧迫される)
自治体側の事務手続きが膨大(総務省への申告、管理コスト)
結果として、どれだけ良いものを作っている生産者でも、
「所定量(例えば10キロ単位)の生鮮食品でなければ無理」[iv]「返礼品の登録が煩雑すぎる」など、
本来活躍すべき人が制度の外にいるという現状がありました。
2.2 解決の鍵は “テクノロジー×地域経済”
こうした課題に向き合ったのが、株式会社雨風太陽です。
彼らのミッションは、
「都市と地方をかきまぜ、境目をなくす」
全国の農家・漁師と都市の消費者をつなぐCtoCプラットフォーム「ポケットマルシェ」や、食材付き情報誌「食べる通信」などを手がけ、地域の生産者の「ストーリーある食」を都市部に届けてきました。
そしてこの延長線上に誕生したのが、「ポケマルふるさと納税」という新しい仕組みです。
🏢 株式会社雨風太陽
📍拠点: 岩手県花巻市
🗓 設立: 2015年2月
📈 上場: 2023年12月(東京証券取引所グロース市場)
💰 資本金: 5.9億円(2023年12月時点)
💼 売上高: 9.5億円(2023年12月時点)
👥 従業員数: 39名(2023年12月時点)
🌱 どんな会社?
「関係人口」をキーワードに、地域と人をゆるやかにつなぐ事業を展開しています。
ここでいう関係人口とは、観光客でも移住者でもない、“地域と関わる人たち” のこと。
🔧 取り組んでいること
- 食と地域をつなぐサービス(個人向け)
- ポケットマルシェ(通称:ポケマル):生産者と消費者を直接つなぐCtoCプラットフォーム
- 食べる通信:食材付きの情報誌(サブスク)
- ポケマルふるさと納税:地域を応援しながら美味しい体験もできる税制度サービス
- 地方をサポートするサービス(企業・自治体向け)
- 地域課題に向き合う法人向けサポートやプロジェクト支援
- 旅と学びのサービス(個人向け)
- ポケマルおやこ地方留学:親子で参加できる地域滞在プログラム
全体的に「人と地域をつなげる」ことがテーマの温かみあるビジネスですね。
2.3 その仕組み,実は特許とってます
雨風太陽が開発した「ポケマルふるさと納税」ですが、実はビジネスモデル特許として出願・権利化済みです(特許第7442831号)。
中身をざっくり言うと、こんな仕組みです。
🛠 ポケマルふるさと納税の特許的ポイント[v]
寄附者がサイトで寄附金を支払うと、その金額に応じてポイントが付与される
ポイントを使って、生産者の商品を自由に選べる(通常のECのように)
送料などが割高になる場合は、自動で最適な寄附額を算出して提示
自治体側の返礼品登録や管理業務は大幅に自動化・効率化
これにより、
✔小ロットの商品も返礼品にしやすい
✔自治体の業務負担を大幅軽減
✔生産者が普段のポケマルと同じ感覚でふるさと納税に参加可能
という「三方良し」の仕組みが実現しています。
2.4 ビジネスとしてどう成立してる?[vi]
「これって、ビジネスになるの?」という声には以下の回答になります。
収益源①:自治体からの手数料収入
収益源②:生産者からの販売手数料
自治体には「業務効率化+地域活性化」というメリット
生産者には「販路拡大とブランディング」
さらに、知財戦略として特許を活用して参入障壁も形成。
今回の特許を直接示したかは不明ですが、雨風太陽は有価証券報告書において、「ポケマルふるさと納税」に関する特許出願にも言及しており、その意味では投資家に対する知財アピールの材料を意識していると考えられます。
3.おわりに
雨風太陽が見せてくれるのは、
「社会課題に正面から取り組む企業が、知財を武器にスケーラブルなモデルを築ける」ということ。
✔制度の隙間にいる人をすくい上げる
✔テクノロジーで現場の負担をなくす
✔知財を使って事業の根幹を守る
そんなモデルは、地方創生や公民連携がますます注目される今、
スタートアップにも大きなヒントを与えてくれます。
本日もご覧いただきありがとうございました。
【参考文献】
[i] 株式会社雨風太陽 HP
https://ame-kaze-taiyo.jp/
[ii] 特許7442831号公報
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2021-156083/10/ja
[iii] 国内初、寄附者と生産者がつながる「ふるさと納税サービス」を開始(特許出願中) 生産者の参加が容易で、旬の短い食材や鮮魚など返礼品ラインナップが拡大 | 株式会社雨風太陽のプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000046526.html
[iv] 例えば、「ふるさと納税の本来の役割とは?」2019 年5月17日 泉佐野市 には、「総務省が示した「経費率 50%」という新たなルールは、自治体にとって相当厳しい内容で あり、現在、全国の自治体が混乱し、困惑しています。」旨の記載がある。
https://www.city.izumisano.lg.jp/material/files/group/71/syucyou20190517.pdf?utm_source=chatgpt.com
[v] ブログ管理人の解釈であり、この特許の権利範囲を示すものではありません。
[vi] 2024年3月期の有価証券報告書