展示会で「伝えること」と「守ること」 ~スタートアップ経営者が考えておきたい展示会参加の視点~

知財全般

内容
1.はじめに:
2.展示会参加において留意すべき知的財産の視点:
(1)PRを意識しすぎて、守るべき情報まで開示していないか:
(2)装置・機械は「見せない設計」も一つの選択:
(3)説明員による情報開示レベルのばらつきに配慮する:
(4)著作権や商標への配慮は、企業姿勢の表れになる:
3.おわりに:

 

1.はじめに[i]

先日、東京ビッグサイトで開催された製造業向けの大型展示会を見学しました。

スマート工場、ロボット、自動化、脱炭素、人手不足対策。
製造業が向き合う課題を背景に、各社が最新技術を携えて、未来図を提示していました。

特に印象的だったのは、「AI」という言葉がブースの至るところで掲げられていたこと。
自社技術の強みを、短い時間で、わかりやすく伝えようとする工夫が随所に見られました。

製造業スタートアップにとって、展示会はスポットライトの当たる舞台です。
ただしその光は、技術の核心まで照らしてしまうこともある。

本稿では、製造業スタートアップの経営者が意識しておきたい「知的財産」の視点を整理します。

 

2.展示会参加において留意すべき知的財産の視点:

(1)PRを意識しすぎて、守るべき情報まで開示していないか:

スタートアップにとって展示会は、

・技術力を伝える場
・顧客やパートナーと出会う場
・投資家に認知してもらう場

という意味で極めて重要です。

しかし、強みを丁寧に説明しようとするあまり、

・技術的なノウハウ
・実装上の工夫
・差別化の核心部分

まで語ってしまうケースも見受けられます。

公知となった情報は、原則として特許取得が困難になります。
さらに、その情報をヒントに他社が周辺技術を出願する可能性もあります。

特にUIは注意が必要です。

画面デザインは「技術の出口」であり、来場者が最初に触れる部分です。
その構成や操作フロー自体が競争力の源泉となる場合、特許だけでなく意匠出願の検討も有効です。

展示会前に、

・出願済みか
・公開して問題ないか
・ノウハウとして秘匿すべきか

を棚卸ししておくことが、安心につながります。

展示会は拡声器のようなもの。
声を大きくする前に、何を話すかを整えておくことが大切です。

 

(2)装置・機械は「見せない設計」も一つの選択:

技術の核心が機械内部にある場合、展示方法は特に重要です。
内部構造が見える展示は、来場者にとって魅力的ですが、
同時に競合にとっても学習教材になり得ます。

たとえば、

・内部が見えない筐体構造にする
・説明用の簡略モデルを用意する
・構造ではなく「効果」や「成果」を中心に伝える

といった工夫も選択肢です。

展示は「全部見せる勇気」だけでなく、「あえて見せない設計」という戦略も存在します。
透明性と秘匿性のバランスを、意図的に設計することが重要です。

 

(3)説明員による情報開示レベルのばらつきに配慮する:

展示会が数日間に及ぶ場合、開発者以外が説明を担当することもあります。

その際に起こりがちなのが、

・質問に誠実に答えようとして踏み込みすぎる
・競合と知らずに技術詳細を話してしまう

といったケースです。

対策としては、

・説明してよい内容
・具体例として出してよい範囲
・答えを濁すべき質問パターン

を事前に共有すること。

トークスクリプトやFAQを用意するのも有効です。
情報管理は書類だけでなく「会話」にも宿ります。

 

(4)著作権や商標への配慮は、企業姿勢の表れになる

展示会資料に他者の図表や写真を使用する場合には、適切な配慮が必要です。

・他社資料や展示物の無断使用を避ける
・引用する場合は出典を明示する

これらは単なる法的リスク回避ではありません。
知的財産を尊重する企業であるというメッセージになります。

また、他社商標の使用にも注意が必要です。
製品名やサービス名を記載する場合には、商標である旨の適切な表示を検討します。

細部への配慮は、企業の信頼性を静かに語ります。

 

3.おわりに:

展示会は、成長への加速装置です。
しかし同時に、自社技術が外の世界へ放たれる場でもあります。

・何を伝えるのか
・何はまだ伝えないのか
・誰がどの範囲まで説明するのか

この整理を事前に行うことで、展示会はより戦略的な舞台になります。

展示会は営業の場であると同時に、
自社の知的財産観が映し出される鏡でもあります。

伝えることと守ること。
この二つを両輪として設計できれば、展示会は単なるイベントではなく、未来への布石になります。

今回もご覧いただきありがとうございました。

※本サイトでは、知財視点で出展前に何を注意すべきかについてのご相談も承っております。

【参考文献】
[i] Factory Innovation Week 2026 – 2026年01月 | 世界の見本市データベース(J-messe) – ジェトロ
https://www.jetro.go.jp/j-messe/tradefair/detail/152068

 

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