ビジネスモデル特許の紹介 ~ファッションレンタルサービスのビジネスモデル特許の一例~

特許

内容

1.はじめに:
2.ファッションレンタルサービスのビジネスモデル特許の一例
2.1 株式会社エアークローゼット
2.2 ファッションレンタルサービス「airCloset」
2.3 特許の概要
2.4 今の好みと、挑戦したいファッションスタイルを出力する
2.5 例外制度をフル活用
3.おわりに:

 

1.はじめに:

ビジネスモデル特許の別の事例の紹介です。

今回はファッションレンタルサービス事業の特許です。

 

2.ファッションレンタルサービスの特許事例

2.1 株式会社エアークローゼット[i]

株式会社エアークローゼットの特許をご紹介します。

同社の企業情報の一部を下記に示します。

2.2 ファッションレンタルサービス「airCloset」

同社は2014年に設立され、2015年2月にファッションレンタルサービス「airCloset」事業を開始しています。以下は2022年6月期の有価証券報告書に記載された事業内容からの抜粋です[ii]

当社は、国内在住の女性に対して、スタイリストが一人一人の顧客の好みに合わせた洋服を選定(パーソナルスタイリング)し個宅に向けて配送しレンタルするサービス「airCloset」を主として提供しています。「airCloset」は非対面で顧客にパーソナルスタイリングを提供する事業として2015年2月にリリース致しました。当サービスは洋服を循環的に活用するシェアリングエコノミーの要素や継続課金制のサブスクリプション型のビジネスモデルを採用していることが特徴です。「airCloset」はメーカー、ブランド等のアパレル事業者と顧客とを引き合わせるプラットフォームとしての機能を有しており、かつ、レンタル中の洋服で気に入ったものについては購入することも可能な機能を備えています。洋服を着ることに関わる移動や選択・メンテナンスや購入(所有)までさまざまな機能を統合したFaaS形式サービスです。

 

2.3 特許の概要[iii] [iv]

ご紹介する特許は、特許6085017号です。

2015年10月に出願されています。

同社は2014年に設立され、2015年2月にairCloset事業を開始していますので、会社設立当初から知財を意識して経営を進めていると考えられます。

以下は、請求項1の記載内容です。

【請求項1 】
スタイリング提供管理サーバ装置と、スタイリストが利用するスタイリスト端末装置と、ユーザの利用するユーザ端末装置と、がネットワークを介して通信可能に接続されるスタイリング提供システムであって、前記スタイリング提供管理サーバ装置が、前記ユーザの情報を記憶するユーザ情報記憶部と、前記ユーザへの推薦を行う商品の情報を記憶する商品情報記憶部と、前記スタイリスト端末装置への前記商品の情報の出力と、前記スタイリスト端末装置の操作による前記ユーザへ推薦する商品の選択を受け付ける商品選定受付手段と、それぞれが異なるファッションスタイル及び/ 又は色を示す複数の画像及び/ 又は文字列の前記ユーザ端末装置への出力と、前記ユーザ端末装置より受け付けた前記ユーザが現在よく着用する衣類に類似するファッションスタイル及び/ 又は色の選択に基づいた、前記ユーザの現在の嗜好の分析と、前記ユーザ端末装置より受け付けた前記ユーザが今後着用したいと考えるファッションスタイル及び/ 又は色の選択に基づいた、前記ユーザの今後挑戦したいという意思の分析と、を行い、前記ユーザの現在の嗜好に即したファッションスタイル及び/ 又は色を示す画像及び/ 又は文字列の出力と、前記ユーザが今後挑戦したいと考えるファッションスタイル及び/ 又は色を示す画像及び/ 又は文字列の出力を行うユーザ嗜好分析手段と、を備えることを特徴とする、スタイリング提供システム。

 

2.4 今の好みと、挑戦したいファッションスタイルを出力する

このスタイリング提供システムの特徴は、ユーザ嗜好分析手段(104)が行う以下の処理にあると考えられます(注1)。

(1)それぞれが異なるファッションスタイルのユーザ端末装置への出力

(2)ユーザ端末装置より受け付けたユーザが現在よく着用する衣類に類似するファッションスタイルに基づいた、ユーザの現在の嗜好の分析

(3)ユーザ端末装置より受け付けたユーザが今後着用したいと考えるファッションスタイルに基づいた、ユーザの今後挑戦したいという意思の分析、

を行い、

(4)ユーザの現在の嗜好に即したファッションスタイルの出力

(5)ユーザが今後挑戦したいと考えるファッションスタイルの出力

を行う。

一言で言うと、この特許は、所定の分析を行った上で

ユーザの現在の嗜好に即したファッションスタイルと、

ユーザが今後挑戦したいと考えるファッションスタイル

を出力するものです。

注1:この記載は、あくまで本ブログ向けに簡易にまとめた記載であり、実際の権利範囲を正しく反映したものとは異なります。

 

2.5 例外制度をフル活用

同社のサービスは、出願前にその関連する内容が、新聞、雑誌、インターネットなどで公表されています。

特許法の原則では、公知になった後に出願しても特許になりません。

但し、例えば、自身で公表して1年以内に出願するなど、所定の条件を満たした場合には、例外規定の適用を受けることができます(「新規性喪失の例外」特許法30条)。

同社はこの例外規定を、本出願だけでも30ケース以上に適用していました。

以下は、その特許法30条の適用を受けた公表ケースの一部です。

日本テレビ放送網㈱が、平成27年6月9日に、news everyday.という番組内で公開

㈱日本経済新聞社が、日経MJ(平成27年6月5日付)第6面に公開

㈱産業経済新聞社が、産経新聞(平成27年6月8日付夕刊)第4面に公開

㈱日本経済新聞社が、日本経済新聞(平成27年6月16日付朝刊)第15面に公開

㈱読売新聞東京本社が、東京読売新聞(平成27年8月26日付朝刊)第13面に公開

㈱KADOKAWAが、週刊アスキー No.1026(平成27年4月21日)、pp.92-95に公開

㈱日経BPが、日経トレンディ No.383(平成27年5月4日)、p.117に公開

野村證券㈱が、野村週報 第3463号(平成27年6月8日)、p.16に公開

㈱BCNが、BUSINESS COMPUTER NEWS vol.1583(平成27年6月15日)、p.22に公開

㈱明光企画が、ママともぷらす No.65(平成27年6月25日)、p.5に公開

㈱日経ピーアールが、日経インテレッセ No.231(平成27年7月1日)、p.6に公開

 

3.おわりに:

同社のサービスは2015年度グッドデザイン賞を受賞しています。

当時の審査委員の評価は以下の内容でした[v]

現代の働く女性を対象に、ファッションへの動機や、彼女たちの限りある時間や空間といった問題を総合的に捉えたところに、このサービスの新規性がある。 ウェブサイトや梱包箱といったファーストコンタクトのデザイン的魅力もあるが、スタイリストを導入したことにより、使い込むほどに、「好みへの適応」と「未知との遭遇」の相反する欲求がバランスされていく経験を提供しているところに、この新たなビジネスモデルの最大のポイントである。

今回ご紹介した特許の内容は、ユーザの好みと試したいファッションスタイルを提示する内容でした。

まさに「好みへの適応」と「未知との遭遇」ですね。

会社設立当初のビジネスのアイデアをベースにした特許の例をご紹介しました。

本日もご覧いただきありがとうございました。

 

【参考文献】
[i] 株式会社エアークローゼット HP
https://corp.air-closet.com/
[ii] 株式会社エアークローゼット 有価証券報告書2022年6月期
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9557/yuho_pdf/S100P9J7/00.pdf
[iii] 特許6085017号
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6085017/15/ja
[iv] 特許庁のサイトのビジネスモデル特許の説明において、IPC又はFIとしてG06Qが付与された特許出願をビジネス関連発明と定義しています。特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向について」https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html
[v] 公益財団法人日本デザイン振興会 HP平成27年9月28日公開
https://www.g-mark.org/gallery/winners/9dcd0b5a-803d-11ed-af7e-0242ac130002

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