内容
1.はじめに:
2.予約管理システムの特許事例
2.1 日本ビジネスシステム株式会社
2.2 特許の概要
2.3 先約者のキャンセルの高さを伝える
2.4 2020年に権利者が変更
2.5 会議室予約管理システム「touch-mee(タッチミー)」を提供
3.おわりに:
1.はじめに:
引き続きビジネスモデル特許の事例紹介です。
今回は予約管理システムの発明をとりあげます。
予約の調整に関するユーザの利便性向上のために、どんなルールを導入しているかに注目です。
2.予約管理システムの特許事例
2.1 日本ビジネスシステム株式会社[i]
今回の特許の出願人は、日本ビジネスシステム株式会社です。
同社の企業情報の一部を下記に示します。
同社は独立系クラウドインテグレーターとして、マイクロソフトのクラウドサービスなどを活用し、顧客のパフォーマンスを最大化することが可能なコンサルティング及びITサービスを提供しています。
上記の3事業の概要は以下の通りです。
- クラウドインテグレーション事業:主に、マイクロソフト社の3クラウド(Azure/M365/D365)を中心としたクラウド製品の導入・開発などの支援。
- クラウドサービス事業:マイクロソフトクラウドサービスを中心に、クラウド利用における保守・運用・改善等のサポートを提供。マイクロソフトのクライドライセンスに利便性の高い機能を独自に具備した自社のクライドサービスを提供
- ライセンス&プロダクツ事業:マイクロソフトクラウドサービスを中心に、クラウドソリューションとライセンス、関連機器をリセール提供。オンプレミスのインフラ、プライベートクラウドサービスなどについても提供が可能
2.2 特許の概要[ii] [iii]
ご紹介する特許は、特許6998832号です。
2018年5月に出願されています。
同社の設立は1990年ですので、設立から28年以上経過した際の出願となります。
下記は、請求項1の記載内容です。
【請求項1】
実空間上に設けられた複数のスペースの利用予約を管理するための予約管理システムであって、 各スペースを識別するためのスペース識別情報と、当該各スペースに関するスペース情報が対応付けて記憶される第1記憶手段を管理する第1管理手段と、 前記スペース識別情報と、日又は時刻の情報を含む、各スペースに対して実行された利用予約の内容を示す予約情報と、が対応付けて記憶される第2記憶手段を管理する第2管理手段と、 ユーザ毎に、前記スペースの予約情報に対する実際の利用状況を、利用履歴情報として、記憶された第3記憶手段を管理する第3管理手段と、 前記スペースの利用予約を申し込む申込みユーザによる要求であって、利用希望期間を含む前記スペースの利用時における利用条件を指定した利用予約要求を取得する取得手段と、 前記利用予約要求が取得された場合に、当該利用予約要求により指定された利用条件を満たす候補スペースを前記スペース情報に基づいて特定する候補スペース特定手段と、 前記特定された候補スペースにおいて既に予約している先約ユーザが存在する場合に、前記先約ユーザにおける予約情報及び利用履歴情報の少なくともいずれか一方を所与の要素に基づいて解析し、当該先約ユーザにおける利用予約を遂行する確率を、確度として、数値化する確度特定処理を実行する確度特定手段と、 前記特定された候補スペース毎の前記特定された確度に関する情報を前記申込みユーザに提供する提供手段と、 備えることを特徴とする予約管理システム |
本特許は「要約書」を見ると概要がつかみやすいと思います。
出願時の要約書には、以下の記述があります。
【書類名】要約書
【要約】 【課題】会議室や施設などのスペースの予約を行う場合に、予約の調整に関するユーザの利便性を向上させることが可能な予約管理システム等を提供すること。 【解決手段】予約管理システムSは、申込みユーザの指定する利用条件を満たす会議スペースに対して、他の先約ユーザにより、既に利用予約がなされている場合には、各先約ユーザにおける利用予約のキャンセルや各ユーザの利用予約を評価するなど利用状況に応じて、又は、利用予約の種別や参加人数などの予約情報に応じて、当該先約ユーザにおける当該予約情報に対する確度を算出し、当該算出した確度を、利用予約を申し込む申込みユーザに提供する構成を有している。 【選択図】図1 |
2.3 先約者のキャンセルの高さを伝える
この予約システムは、申込みユーザの指定する会議スペースが、先約ユーザにより予約されている場合に、各先約ユーザにおける過去の利用状況(又は、予約の種別や人数などの予約情報)に応じて、先約ユーザの予約に対する確度を算出して、申込みユーザに提供するもの、と考えられます(注)。
例えば、確度の低い予約に関してはその予約がキャンセルされる可能性が高いことを示し、スムーズな交渉により、先約ユーザから申込みユーザに該当スペースの利用予約を譲り渡す可能性が高くなる。これにより、予約調整に関するユーザの利便性を向上させることができます[iv]。
つまり、この発明は、先約者のキャンセルの高さを伝えるもの、といえそうです。
注):この記載は、あくまで本ブログ向けに簡易にまとめた記載であり、実際の権利範囲を正しく反映したものとは異なります。
2.4 2020年に権利者が変更
この特許は出願審査請求である2020/12/10に出願人が株式会社ISID-AO(現・株式会社電通総研セキュアソリューション)へと変更になっています。
同社の企業情報の一部を下記に示します。
2.5 会議室予約管理システム「touch-mee(タッチミー)」を提供[v]
本特許の承継人である株式会社電通総研セキュアソリューションは、会議室予約管理システム「touch-mee(タッチミー)」を提供しています。
承継人である株式会社ISID-AO(現・株式会社電通総研セキュアソリューション)は、本特許に関連する同社ソリューションが、会議室予約システム「touch-mee」であることを公表しています[vi]。
今回の特許が本サービスに直接かかわっているかは、特許公報からでは不明ですが、同社にとって魅力ある特許と言えそうです。
3.おわりに:
予約調整に関するユーザの利便性を向上させる1手段として、「先約者のキャンセルの高さ」に注目した特許でした。
ユーザに満足していただけるサービスを追求していくにはどうすべきか。
事業を継続していく上で常に持ち続けるこのような問題意識が、特許に繋がる場合があることを教えてくれる事例でした。
本日もご覧いただきありがとうございました。
【参考文献】
[i] 日本ビジネスシステム株式会社 HP。特に有価証券報告書、統合報告書を参考
https://www.jbs.co.jp/
[ii] 特許5758058号
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-5758058/15/ja
[iii] 特許庁のサイトのビジネスモデル特許の説明において、IPC又はFIとしてG06Qが付与された特許出願をビジネス関連発明と定義しています。特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向について」https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html
[iv] 出願明細書段落[0010][0011]参照
[v] 会議室予約管理システム「touch-mee(タッチミー)」
https://www.touch-mee.net/index.html
[vi] 株式会社ISID-AO HP「特許取得のお知らせ」2022.1.19
https://www.ss.dentsusoken.com/news/20220119/