スタンプラリーを完遂させるビジネスモデル特許 ~適切なレコメンデーションを行う発明~

特許

内容

1.はじめに:
2.スタンプラリーシステムの特許事例
2.1 株式会社ギックス
2.2 特許の概要
2.3 ユーザの趣味嗜好、興味関心に近い商品を推薦する
2.5 個客選択型スタンプラリー「マイグル」を提供
3.おわりに:

 

1.はじめに:

今回はスタンプラリーの発明をとりあげます。

身近な例では、駅などのチェックポイントを回るゲームを思い浮かべる方もいるかもしれません。

今回の発明は、その電子版の技術に関するものです。

スタンプラリーを完遂させるために、どんな工夫をしているかに注目です。

 

2.スタンプラリーシステムの特許事例

2.1 株式会社ギックス[i]

今回の特許の出願人は、株式会社ギックスです。

同社の企業情報の一部を下記に示します。

2.2 特許の概要[ii] [iii]

ご紹介する特許は、特許6780875号です。

出願日は2019年5月27日で、6月26日に出願審査請求を行っています。

本件は、早期審査の対象です。

この発明も国際特許分類にG06Q**が割り当てられており、ビジネスモデル発明の1つといえそうです。

従来のスタンプラリーシステムは、スタンプ対象は予め設定されたものであり、参加者の趣味嗜好に合わない商品がスタンプ対象になる場合もあり得ました。

スタンプ対象の商品が参加者の要望からかけ離れたものである場合、参加者のスタンプラリー完遂意欲が低減され、本来の目的である商品の販売促進などを達成できません。

本発明は、スタンプラリーを利用するユーザの端末装置に対して、有用なスタンプを表示させることを目的としたものです[iv]

 

方法発明である請求項8は下記のとおりです。

【請求項8】

端末装置に電子的なスタンプを表示させるスタンプラリーを、コンピュータを用いて実施するスタンプラリー実施方法であって、

スタンプラリーを利用するユーザと、前記ユーザに紐づけられたコンテンツとを含むデータから、前記ユーザと前記コンテンツをノードとし、前記ユーザと前記コンテンツとの間の関係をエッジとする2部グラフを作成する加工工程と、

前記2部グラフに基づいて、前記ユーザと前記コンテンツを含む複数のグループに分類する分類工程と、

前記グループ毎に、前記ユーザに推薦する前記コンテンツを選定する選定工程と、

前記選定工程で選定された前記コンテンツを、前記スタンプとして前記端末装置に表示させるためのデータを、当該端末装置に提供する提供工程と、を有することを特徴とする、スタンプラリー実施方法。

 

このスタンプラリー実施方法は、図1に示したスタンプラリーシステム1を用いて行われます。

【図1】

明細書中では、データベース装置30が例えばスーパーマーケットなどの小売店に設けられたデータベース装置であって、スタンプラリー支援装置10において、当該小売店で取得されるデータからユーザに推薦するコンテンツを選定し、ユーザの端末装置20にスタンプラリーのスタンプを表示させる場合を例にとり説明しています。

 

請求項8は、次の1)~4)のステップを行うものと考えられます(注)。

1)図4に示すように、スタンプラリーのユーザ(例えば「ユーザID」)と、ユーザに紐づけられたコンテンツ(例えば「購入した商品」)とを含むデータから、ユーザとコンテンツをノード(丸)とし、ユーザとコンテンツとの間の関係をエッジ(線)とする2部グラフを作成する。

【図4】

 

2)この2部グラフに基づいて、図7に示すように、ユーザとコンテンツを含む複数のグループに分類する。

【図7】

3)図8に示すように、グループ毎に、ユーザに推薦するコンテンツ(商品)を選定する(この例では、Group 1では、牛乳・ヨーグルト・プリンが推薦コンテンツとなっている)。

【図8】

 

4)選定されたコンテンツ(商品)を、図9のように、スタンプとして端末装置に表示させるためのデータを、当該端末装置に提供する。

【図9】

注):この記載は、あくまで本ブログ向けに簡易にまとめた記載であり、実際の権利範囲を正しく反映したものとは異なります。

 

2.3 ユーザの趣味嗜好、興味関心に近い商品を推薦する[v]

ユーザが表示された商品を購入すると、スタンプが獲得されて“Clear!”と表示され、獲得スタンプ数が加算されます。

2部グラフに基づいて複数のグループに分類するので、各グループ内ではユーザの行動や趣味嗜好、興味関心などが近くなります。

また、各グループ内では、ユーザの利用できるポテンシャルやお金をかけることができるポテンシャルも近くなります。

グループ毎に、推薦商品を選定し、商品をスタンプとして端末装置20に表示させるので、ユーザにとって有用なものとなり、確度の高いスタンプラリーを実施できます。

つまり、ユーザに対して適切な商品の推薦を行うことができます。

その結果、スタンプラリーを完遂する意欲を向上させることができ、適切な販売促進が可能となります。

 

2.5 個客選択型スタンプラリー「マイグル」を提供[vi][vii][viii]

同社は、個客選択型スタンプラリー「マイグル」を提供しています。

例えば、JR西日本グループが提供する会員サービス「WESTER」に本技術が利用されています。

JR西日本グループの説明資料には、“マイグルAIには、以下の特許技術および特許出願技術が活用されています”との説明加えて、本特許番号の記載がありました。

早期審査請求を行っていることもあり、今回ご紹介した特許は、同社にとって重要な特許の1つであるといえそうです。

 

3.おわりに:

適切な販売促進を可能とするためにユーザに対して適切な商品の推薦する。

そのために、スタンプラリーを完遂する意欲を向上させる仕組みを考えた今回の発明。

スタンプラリーをうまく使いこなすことにより、強力なマーケティングツールになり得ます。

「あらゆる判断を、Data-Informedに。」という同社の理念に沿った発明の一つともいえそうです。

本日もご覧いただきありがとうございました。

 

【参考文献】
[i] 株式会社ギックス HP
https://www.gixo.jp/
[ii] 特許6780875号
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6780875/15/ja
[iii] 特許庁のサイトのビジネスモデル特許の説明において、IPC又はFIとしてG06Qが付与された特許出願をビジネス関連発明と定義しています。特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向について」https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html
[iv] 特許6780875号 段落【0007】【0008】参照。
[v] 特許6780875号 段落【0063】【0064】参照。
[vi] マイグル:個客選択型スタンプラリー – GiXo Ltd.
https://www.gixo.jp/service/service03/mygru/
[vii] WESTERサービスとは
https://wester.jr-odekake.net/service/about/
[viii] JR西日本におけるデータアナリティクスの取組
https://www.soumu.go.jp/main_content/000826717.pdf

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