内容
1.はじめに:
2.建物の間取り図の画像を取得する特許事例:
2.1 株式会社マーキュリーリアルテックイノベーター
2.2 特許の概要
2.3 間取り図作成サービス
3.おわりに:
1.はじめに:
今回は不動産業に関する発明をとりあげます。
従来、マンションなどの不動産広告に使われている間取り図は、ディベロッパーからのパンフレットや図面をトレースし、広告用に作り直されていました。
しかし、図面業者への依頼はコストや納期の問題があり、CADでの自作は手間と時間がかかります。
近年、画像認識技術により、印刷物から精度よく図面を認識できるようになってきています。
本発明が、どのような工夫で間取り図の画像を簡単に取得できるようにしているかに注目です。
2.建物の間取り図の画像を取得する特許事例:
2.1 株式会社マーキュリーリアルテックイノベーター[i]
今回の特許の出願人は、株式会社マーキュリーリアルテックイノベーターです。
同社の企業情報の一部を下記に示します。
2.2 特許の概要[ii] [iii]
ご紹介する特許は、特許7062318号です。
出願日は2021年7月27日で、8月4日に出願審査請求を行っています。
本件は、早期審査の対象です。
この発明も国際特許分類にG06Q**が割り当てられており、ビジネスモデル発明の1つといえそうです。
本発明は、文字の表示態様や内容が独自に設定された間取り図の画像を簡単に取得できるようにするものです。
この発明は、端末装置1とサーバ2との間で、図2に示したステップ(ST)で処理を進めます。
【図2】
ST110:端末装置にログインすると、建物の検索条件の入力画面が表示される。
ST115:入力された検索条件はサーバに送信され、サーバは、検索条件に該当する建物を検索し、端末装置に送信する。
ST120:受信した建物情報の中から、見たい特定の建物を選択し、間取り図をサーバに要求する。
サーバは、要求された間取り図を端末装置に送信し、端末装置は間取り図のリストを表示する。
ST125:表示されたリストの中から、1以上の間取り図を選択し、各間取り図の情報をサーバから取得する。
ST130:端末装置は、受信した間取り図に含まれる文字の表示態様や内容を設定するための画面を表示する(図8)。
この発明は、図8に示すように、間取り図における個々の区画について、様式の名称、区画の大きさ、区画の大きさの単位を利用者が任意にカスタマイズできます。
【図8】
図8の説明は以下の通りです。
D:間取り図に含まれる文字の表示態様や内容を設定するための指示を入力する画面。
D1:文字のフォントの設定
D2:文字の大きさの設定
D3:D4~D8に示すような、間取り図における各区画の文字設定指示を入力できる。
D4:各区画に割り当てられた番号
D5:各区画の様式の名称(洋室、和室、トイレなど)の選択
D6:各区画の大きさ(数値)の設定
D7:各区画の大きさの単位の設定
D8:列D6及び列D7の単位を表記するか否の設定
請求項11の記載は以下の通りです。
【請求項11】
コンピュータが間取り図の画像を取得する方法であって、 画像の取得が可能な複数の間取り図から1以上の間取り図を選択する間取り図選択指示を入力する工程と、 前記間取り図選択指示により選択された前記間取り図に描かれる図に関する図面情報と、前記間取り図選択指示により選択された前記間取り図に含まれる文字に関する文字情報とを取得する工程と、 前記間取り図に含まれる前記文字の表示態様及び内容をそれぞれ個別に設定する文字設定指示を入力する工程と、 前記図面情報と前記文字情報とに基づいて、前記文字設定指示に応じた前記文字を含むように生成された前記間取り図の画像を取得する工程とを有し、 前記文字設定指示を入力する工程は、 前記間取り図選択指示により複数の前記間取り図が選択された場合、当該複数の前記間取り図について順番に前記文字設定指示を入力することと、 前記間取り図選択指示により複数の前記間取り図が選択された場合、前記文字の表示態様に関する設定の内容の少なくとも一部、及び/又は、前記文字の内容に関する設定の内容の少なくとも一部について、当該複数の前記間取り図に共通の設定の内容を用いる指示を入力することとを含む、 方法。 |
請求項11のポイントは、
文字の表示態様、あるいは文字の内容に関する設定について、複数の間取り図に共通の設定の内容を用いる指示を入力できる点にあると考えられます(注)。
注):この記載は、あくまで本ブログ向けに簡易にまとめた記載であり、実際の権利範囲を正しく反映したものとは異なります。
2.3 間取り図作成サービス[iv]
同社は「間取り図作成サービス」を提供しています。
同社のHPには以下の記載があります。
間取図作成サービスとは、広告等で使用するトレースされた間取図をワンストップで作成するサービスです。
顧客との直接的な関係から取得した高精度の自社所有データを使用しているため、トレース済みの間取図をスピーディかつ低コストでご提供いたします。 必要な間取図を取得し、業者へ依頼していた従来のやり方と比べて、コストや手間を省き業務の効率化を促進します。 |
今回ご紹介した発明と密接な関係がありそうです。
3.おわりに:
いかがでしたか、複数の間取り図に共通の表示設定ができるという点に着目し、間取り図の画像を簡単に取得できるようにした今回の発明。
みなさまの事業活動においても、同様あるいは類似の視点で、技術の囲い込みができるケースがあるかもしれませんね。
本日もご覧いただきありがとうございました。
【参考文献】
[i] 株式会社マーキュリーリアルテックイノベーター HP
https://mcury.jp/
[ii] 特許7062318号
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7062318/15/ja
[iii] 特許庁のサイトのビジネスモデル特許の説明において、IPC又はFIとしてG06Qが付与された特許出願をビジネス関連発明と定義しています。特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向について」
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html
[iv] 間取図作成サービス|1タイプ500円(税別)でトレース済みの間取図を取得! (mcury.jp)
https://service.mcury.jp/lp/floor-plan/