内容
1.はじめに:
2.審査結果の最初の通知はいつ頃来るのか?:
2.1 ファーストアクション(FA)期間とは:
2.2 意匠・商標は出願により審査開始。特許は審査請求が別途必要:
2.3 特許は審査請求から約10か月、意匠は出願から約6か月:
2.4 商標は変動中であり、現在は出願から約6ヶ月が一つの目安:
3.【参考】審査官人員の動向:
4.おわりに:
1.はじめに:
特許・意匠・商標などを特許庁に出願すると、特許庁の審査官が審査を行います。
個々の案件によって審査時間には差がありますが、権利化までの期間の一応の目安を知っておくことは、出願の戦略を検討する上でも重要です。
考えたアイデアについて、特許で保護を求めるべきか、それとも意匠や商標で保護すべきか、更には多面的な保護(知財ミックス)が必要か、などを検討する上でも、権利の種類によってどの程度の違いがあるかも重要な視点です。
今回のテーマは、ファーストアクション(FA)期間です。
2.審査結果の最初の通知はいつ頃来るのか?:
自社の出願についての審査結果の最初の通知はいつ頃来るか?これは、ファーストアクション(FA)期間の実績が1つの目安になります。
2.1 ファーストアクション(FA)期間とは:
特許行政年次報告書によれば、ファーストアクション(FA)期間とは、以下の通りです。
(1)特許の場合は、審査請求から、審査官による審査結果の最初の通知(主に特許査定又は拒絶理由通知書)が出願人等へ発送されるまでの期間の年平均のこと。
(2)意匠・商標の場合は、出願から、審査官による審査結果の最初の通知(主に登録査定又は拒絶理由通知書)が出願人等へ発送されるまでの期間の年平均のこと。
2.2 意匠・商標は出願により審査開始。特許は審査請求が別途必要:
出願の種類により、審査に入るタイミングに違いがあります。
意匠や商標は、特許庁へ出願することで審査段階に入ります。
特許は、出願に加え、審査を請求(出願審査請求)することにより審査段階に入ります。
出願審査請求は出願日から3年以内に行う必要があり、期間を過ぎると、出願が取り下げられたものと見なされるので注意が必要です。
なお、実用新案は、実体的な審査を経ずに登録されるルールであるため、今回の説明から除外しています。
2.3 特許は審査請求から約10か月、意匠は出願から約6か月:
下のグラフは、直近5年間のFA期間の実績です。
ご覧の通り、直近5年間では、特許と意匠は大きな変化がありません。
ファーストアクション受理の目安としては、特許は審査請求から約10カ月後、意匠は出願から約6ヶ月後といえそうです。
一方、商標は2020年をピークにその前後で最大約4カ月の幅で増減してます。商標はこの期間だけで判断するには少し不安があります。
2.4 商標は変動中であり、現在は出願から約6ヶ月が一つの目安:
商標に不安定な動きがあったので、過去20年間の実績をみておきましょう。意匠・商標については右側の縦軸を使っていますので注意して下さい。
(1)特許について:
特許は、2009年の29.1カ月のピークになるまではFA期間の長期化傾向が見られ、その後2014年にかけて短期化傾向が続き、その後は8年連続で10カ月前後を維持して推移しています。
(2)意匠について:
意匠は、3種類の出願の中で最も変動が少なく安定的な動きをみせており、20年間で約1.6カ月短縮しています。
(3)商標について:
商標は、2008年の7.9カ月のピークになるまで長期化傾向が見られ、その後2015年の4.0カ月まで短期化傾向でした。
その後、再び長期化傾向になり、既に説明したように、2020年に10.2カ月のピークを迎えます。
2015年-2022年で見ると、6カ月以上の幅で増減しています。
商標のFA期間は安定的とは言えず、今後の動向にも留意すべきでしょう。
但し、直近は、短期化傾向にあることから、急激に長期化に向かうことは考えにくく、現時点では、出願から約6ヶ月が一つの目安と考えておいてはいかがでしょうか。
3.【参考】審査官人員の動向:
FA期間の変化は、出願数と審査官人員の増減が要因になります。
ここでは、参考として、審査官人員の動向を示しておきます。
下のグラフは、20年間にわたる審査官人員の動向です。
グラフからは、特許庁が出願数の増加に対応できるよう審査官人員を調整していることが分かります。
出願数は、出願人自身の出願戦略の影響の他、出願手数料や権利化後の年金の増減、保護期間の変更などの特許行政による影響等、複数の影響により、その数が増減します。
つまり、不確定要素はどうしても発生してしまうことから、結果的にFA期間の変動幅が大きくなることがあると考えられます。
4.おわりに:
特許、意匠、商標の各出願について、審査結果の最初の通知はいつ頃来るか?の目安として、ファーストアクション(FA)の実績をご紹介しました。
権利取得のための手続きとして、多くの場合、拒絶理由通知を受けることは避けて通れない道です。
本投稿が自社の出願戦略を考えるきっかけになりましたら幸いです。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。
参考文献
特許庁 特許行政年次報告