内容
1.はじめに:
2.資金調達手法をビジネスにつなげようとしている発明:
2.1 多数のCF案件を複数の金融機関に提示する
2.2 ユーザの需要に合致した資金調達情報を的確に提示する
2.3 投資案件情報にFoF投資家が容易にアクセス可能にする
2.4 企業が提供するプロダクトの市場での受け入れ程度を表す評価指標値を算定する
2.5 特許データを元にして潜在的な買収先又は提携先のリストを作成する
2.6 融資や出資等をより容易に行えるようにする
3.おわりに:
1.はじめに:
起業における資金調達は、スタートアップの成長に向けては重要な問題です。
そんな重要な問題を、発明創作のための課題と捉えてみたらどうなるのか?
今回は、簡易検索によりヒットしたものの中で、資金調達手法をビジネスにつなげようとしている発明のいくつかをご紹介します。
2.資金調達手法をビジネスにつなげようとしている発明:
ご紹介する発明は、J-PlatPatの全文検索にて「資金調達」×「スタートアップ」で検索したものです[i]。
いずれも特許庁による審査の結果、特許権が付与されたものです。
なお、発明の概要はブログ管理人によって簡易に表現しており、権利範囲を忠実に表現しているものではありませんのでご注意ください。
2.1 多数のCF案件を複数の金融機関に提示する
「事業性評価支援装置、事業性評価支援方法、プログラム、及び事業性評価支援システム(特許7163030,日立システム)」
スタートアップ企業や新事業を立上げる個人等(資金需要者)が利用可能な資金調達方法として、クラウドファンディング(CF)の普及が進んでいる。
CFは、サービスや商品等の購入を希望する多数の一般人(出資者)が資金需要者やその事業内容を見極めて出資してもよいCF案件であるか否かを判断している。
従来の発明の1つとしては、成立済みのクラウドファンディング(CF)案件に対する 投資の可否を表す指数を、金融機関に提供するに過ぎず、出資者を募集している未成立のCF案件や募集期間が終了した不成立のCF案件に対する資金調達状況が、金融機関だけでなく、資金需要者や出資者等にも広く活用されているとは言い難い。
この発明は、金融機関、資金需要者、出資者等が、未成立や不成立のCF案件に関する情報を広く活用できるようにするため、複数のCF企業から集めた多数のCF案件を、複数の金融機関に提示する。
2.2 ユーザの需要に合致した資金調達情報を的確に提示する
「情報処理システム、情報処理方法及びプログラム」(特許7428751、マネーフォワード)
資金調達手段を確保したい経営者としては、自身の事業体の現況に適合した商品やサービスなどが提示されることが望ましいと考えられる。
この発明は、ユーザの需要に合致した資金調達に関する情報を的確に提示する。具体的には、第1のユーザと、第2のユーザとの各々の会計情報と、資金調達への申込の実績より、対象ユーザに提示することが可能な情報を高精度で抽出する。
2.3 投資案件情報にFoF投資家が容易にアクセス可能にする
「情報提供システム、情報提供方法、及び情報提供プログラム」(特許6921292、ニュー・フロンティア・キャピタル・マネジメント・インターナショナル)
特許権者は、国内外新規ファンドの企画・設立・運営支援業務、投資運用業務を行う企業です[ii]。
本発明は、戦略的投資家、資金調達や事業提携を希望する企業、及びVC(Venture Capital)/PE(Private Equity)ファンドの全てにメリットがあるファンド・オブ・ファンズを運営する技術に関するもの。
従来、戦略投資家が取得可能な情報は、ファンド・オブ・ファンズのポートフォリオに含まれるVC/PEファンドが投資した企業の案件情報の一部に限定されていた。
本発明は、投資に至った案件情報、投資に至らなかった案件情報、投資を検討中の案件情報、現地担当者が入手した情報を含む詳細な投資案件情報に、FoF投資家が容易にアクセス可能な仕組みが構築されている。
これにより、戦略投資家はファンド・オブ・ファンズへの投資を通じて、戦略的投資家の観点からの投資判断に必要な情報を獲得できる。
2.4 企業が提供するプロダクトの市場での受け入れ程度を表す評価指標値を算定する
「プログラム、情報処理装置および情報処理方法」(特許7180921、hackjpn)
特許権者は、webサービスの開発・運営/ITコンサルティングの日本企業です[iii]。
市場や顧客に対して新しいプロダクト、サービスを提供するスタートアップ企業などにおいて、スタートアップ企業が提供するプロダクトがどの程度市場に受けられているのかを客観的に評価することは難しいとされている。
本発明は、プロダクトスコア算定処理において、ユーザにより投稿された投稿記事情報を取得し、取得した投稿記事情報に関連しているプロダクトを特定し、投稿記事情報に基づき、特定されたプロダクトに関する評価指標値であるプロダクトスコアを算定する。
これにより、企業が提供するプロダクトが市場でどの程度受け入れられているのか、受け入れられる見込みがあるのかを表す評価指標値を算定することができる。
2.5 特許データを元にして潜在的な買収先又は提携先のリストを作成する
「企業買収又は企業連携先検索装置、企業買収又は企業連携先検索方法及びプログラム」(特許7324237、デロイトトーマツコンサルティング合同会社)
本発明は、特許データを元にして潜在的な買収先又は提携先のリストを作成するための発明です。具体的には、
(1)特定テーマに関連する特許出願データを含んだ母集団データを作成し、特許出願毎に、IPC分類データの有無を示すm次元のデータを生成する。
mは、IPC分類データの種類の数を示す。
(2)m次元のデータを主成分分析した結果に基づいて、特許スコアを算出する。
(3)特許スコアを利用して分類した結果に基づいて、特許クラスタを複数個生成し、特許クラスタ情報を生成する。
(4)特許クラスタ毎に、特許出願の出願人である企業の評価値を示す企業スコアを企業毎に算出・集計して、特定テーマにおいて企業買収先又は企業連携先を判断するためのデータリストを作成する。
2.6 融資や出資等をより容易に行えるようにする
「情報処理方法、情報処理装置、及びプログラム」(特許6532996、メルカリ)
従来、融資や出資等を行いたいユーザが、融資先等を選ぶことが困難な場合があった。
この発明は、融資や出資等をより容易に行えるようにする技術。具体的には、
(1)第1ユーザの資金調達目的やユーザ情報に基づいて複数のテーマを決定する。
(2)決定したテーマに対して第1ユーザを対応付ける。
(3)第2ユーザにより指定された、第1テーマに対する第1金額の資金提供の情報を受信し、第1金額を第1テーマに対応する第1ユーザを含むユーザに分配する。
決定する処理は、第1ユーザに入力された資金調達の目的の文章から抽出した複数の名詞を、上位概念の単語、類義語、または同義語に変換して繋げた文をテーマとして生成する。
3.おわりに:
今回ご紹介した発明の権利者は、メーカーだけでなく、コンサル企業、投資運用企業など、幅広い分野でした。
潜在的な買収先又は提携先のリストを、特許データを元に作成するというアイデアなどは興味深いところです。
ある特定の課題に注目して深堀りしていくことは、発明の創作においても、とても大切です。
一方、1つのビジネスを行っていく上でも、視点を変えれば様々な課題が浮かび上がることがあります。
この点は、発明の創作活動においても同じです。
発明の創作活動が行き詰った場合や、創作のバリエーションを増やしたい場合には、いつもとは異なる視点からの課題を考えてみると、新たな発明へのアイデアや、自社のビジネスへの改善へのアイデアにつながるかもしれません。
今回もご覧いただきありがとうございました。
【参考文献】
[i] J-PlatPat thttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/
[ii] New Frontier Capital社HP https://nfcapital.co.jp/
[iii] Hackjpn社HP https://hackjpn.com/aboutus/