内容[i]
1.はじめに ― 出願すべきか、見送るべきか?
2. 出願件数30万件超の背景と意味
2.1 なぜいま、特許出願数が増えているのか?
2.2 中小企業の出願が増えている理由は?
2.3 10年トレンド:マイナス成長からの反転兆候
2.4 出願、うちの会社にも必要?
3.おわりに: 考えた時が、出願を前に進めるタイミング
1.はじめに ― 出願すべきか、見送るべきか?
「この技術、特許出すべき? そんなリソースあったけ?」
そんな葛藤を抱えるスタートアップ経営者も少なくないはずです。
プロダクト開発・資金調達・採用に追われる中で、知財戦略はつい後回しにされがち。
ですが、いま特許出願のトレンドに変化が起きています。
2024年の国内の特許出願件数は30万件を突破。2年連続で30万件突破です。
コロナ後の回復基調が続いており、特に中小・スタートアップ企業の動きは注目です。
この記事では、スタートアップ目線でこの数字が何を意味するのか、経営にどう活かすべきかを考察します。
2. 出願件数30万件超の背景と意味
2.1 なぜいま、特許出願数が増えているのか?
2024年の国内特許出願件数は30万6,855件で、前年比+2.2%の成長。
2020年に前年比−6.3%(30万7969件→28万8472件)と大きく落ち込んだ出願数は、2021年以降じわじわと回復。
2023年には+3.7%(30万133件)、2024年も2%超の増加(30万6,855件)を記録しました。
この2年間で「知財はコスト」から「戦略的資産」へと捉え直す動きが明確になっています。
2.2 中小企業の出願が増えている理由は?
2023年のデータでは、全体の13.4%を中小企業(スタートアップ含む)が占めていました。件数にすると4万件超。大企業が85%以上を占めている中でも、この比率を維持しているのは注目すべき点です。
なぜか?
近年、VCやCVCの評価基準に「特許保有の有無」が含まれるケースが増えています[ii]。
出願済みであることで、技術の優位性や事業継続性、模倣リスクへの対策ができていると判断される。
つまり、知財は信頼性の証明書になっているのです。
スタートアップにとって、出願件数の増加は単なる統計ではなく、市場や投資家が知財の価値を再評価し始めた兆候とも捉えられます。
2.3 10年トレンド:マイナス成長からの反転兆候
国内の特許出願の総数は、直近10年の長期で見てみると、年平均成長率(CAGR)−0.4%とマイナスです。
一見ネガティブに見えるかもしれませんが、昨年(2023年)時点では−0.6%だったことを考えると、減少幅は縮小傾向にあります。
2024年の出願数は、2019年の水準にまで回復。
この“底打ち感”は、国内の大企業・中小企業問わず、知財への再投資が進んでいるサインといえるでしょう。
2.4 出願、うちの会社にも必要?[iii]
「特許って結局コストでしょ?」
そんなふうに感じている方も多いと思います。
確かに短期的視点だけを持ち合わせるとコストと捉えてしまうかもしれません。
しかし中長期で見れば、
・模倣リスクの軽減
・資金調達時の評価ポイント
・M&Aや事業提携の土台
・海外展開時の法的防衛線
といった、経営のあらゆるフェーズで力を発揮する“無形資産”になります。
特に、DeepTech、SaaS、製造系スタートアップなどは、1件でも出願済みであることが、信用力を劇的に高めるケースがあることです。
3.おわりに: 考えた時が、出願を前に進めるタイミング
2024年、国内特許出願数は2年連続で30万件を突破し、出願数は明確に回復トレンドにあります。
この動きは、スタートアップ経営者にとって単なるニュースではなく、自社の技術・事業戦略を見直すきっかけになります。
「うちも特許出願した方がいいかも?」
そう思ったら、タイミングとしては“今”がちょうどよいかもしれません。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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【参考文献】
[i]特許庁ステータスレポート2025
https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2025/index.html
[ii] ベンチャー投資家のための知的財産に対する評価・支援の手引き
https://www.jpo.go.jp/support/startup/document/index/venture_tebiki.pdf?utm_source=chatgpt.com
[iii] ディープテックスタートアップの評価・連携の手引きhttps://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230602006/20230602006-1.pdf?utm_source=chatgpt.com