知財に頼らず業界トップに立つ~USS社に学ぶ“非知財型”の競争優位構築術(後編)~

知財全般

内容
2.5 19会場を有するオートオークション事業が主力:
2.6 プラットフォーマー的な地位が武器:
2.7 「知財権を取らない戦略」にもリスクはある:
2.8 USS社は今後も知財権は不要なのか?:
3.まとめ:

前編をご覧になりたい方はこちらから。

以下、後編です。

2.5 19会場を有するオートオークション事業が主力:

USS社は主に下記3事業を展開しています。主力は①オートオークション事業です。

① オートオークション事業:中古自動車取扱事業者を会員とするオートオークションを運営。

② 中古自動車等買取販売事業:㈱ラビット・カーネットワークを通じて中古自動車の買取販売事業を運営。

③ リサイクル事業:㈱アビツを通じて廃自動車・金属スクラップ等のリサイクル事業を運営。

USS社のオートオークション事業は、全国に19のオークション会場[i]を持ちます。

シェア2位のJUグループは数10会場を有しますが[ii]、JUは連合体(各都道府県組合)のため、この数字をUSS社との直接比較するのは妥当でない可能性があります。

むしろ、シェア4位のCAA社が4会場(中部・東京・岐阜・東北)という情報[iii]と比較することで、USS社が如何に規模が大きいかが分ります。

 

2.6 プラットフォーマー的な地位が武器:

オートオークション事業とはいわゆる「場の提供」を行い、手数料収入で利益を得るビジネスモデルです。

会員制オークションのため、出品車両数と会員数の規模が大きいほど魅力が増します。

USS社は全国に19会場を有し、出品車両数や会員数で圧倒的シェアを確保しています。

つまり規模の経済と囲い込みが働き、ネットワーク効果[iv]により、新規参入が難しい状態を作っています。

このプラットフォーマー的な地位こそが競争優位の源泉です。

ここに知財権を積極的には取得しない秘密が隠されていそうです。

スタートアップ経営者が学べる点をまとめると、以下となります。

USS社は「特許」ではなく「会員ネットワーク」「取引データ」「会場アクセス性」という3つの“非登録型知的資産”を積み上げてきました。

これらは時間と信頼の積み重ねが生み出す資産であり、短期間では模倣できません。

スタートアップにとっても、こうした“登録できない知財”をどう育てるかが競争力の核となります。

 

2.7 「知財権を取らない戦略」にもリスクはある:

非知財型モデルのリスクは、成功が見えた瞬間に模倣者が現れることです。

したがって「先に市場を支配し、スイッチングコストを高める」か、
「技術的・制度的な独自仕様を設ける」かのどちらかを意識する必要があります。

USS社のように規模・会員制・取引データという無形資産を築けない限り、
新興企業は「模倣されても勝てる構造」を意図的に設計する必要があります。

 

2.8 USSは今後も知財権は不要なのか?:

現状の圧倒的なシェアを見る限り、USS社には他社が入る余地は無いようにも見えます。

しかし、以下に挙げる脅威も現実に存在しているといえます。

・ネット専業オークションが徐々に浸透[v]

・出品、オークションへの参加、落札までをオンラインで完結できるサービスの出現[vi]

・高齢化、少子化による需要の変化[vii]

 

これらの環境変化に対しては、例えば、

・オンライン型オークションとのデータ連携・API接続
・車両履歴や取引履歴のブロックチェーン管理
・海外輸出市場での現地パートナー提携

など、知的資産とITを組み合わせた次世代モデルの構築を意識する必要があるかもしれません。

仮にそのような路線で拡大していく場合、特許を積極的に取得する戦略に切り替えることも考えられます。

 

3.まとめ:

USS社の事例を通して、知財権を積極的に活用しなくても着実に利益を得るビジネスモデルを学んできました。

この事例を通じてスタートアップ経営者が知財視点を通して見えてくる教訓を挙げるとすると、以下となります。

  • 特許だけが参入障壁ではない。ネットワーク・データ・信頼も“知的資本”。
  • 知財出願の前に、まず「どの資産が事業の核心か」を棚卸しする。
  • 知財を“取るか/取らないか”ではなく、“何を守る/何で攻めるか”を決める。

 

実際、ご相談を受ける中で、特許を取るべきか否かという観点の質問を受けることが多くあります。

今回のUSS社の事例は、その問いに対するひとつの答えを示しています。

「知財をどこまで取るべきか」「特許にコストをかける価値があるのか」
そんな経営判断に迷ったら、ぜひご相談ください。
あなたの事業構造に必要な“攻めと守りのバランス”を一緒に考えます。

ご相談はこちらから

 

本日もご覧いただきありがとうございました。

 

【参考文献】
[i] USS社HP
https://www.ussnet.co.jp/auction/site-guide/index.html?utm_source=chatgpt.com
[ii] JUナビ&JUトレード参加会場一覧
https://www.junavi.jp/Html/kaijo.html
[iii] CAA社公式サイト
https://caanet.jp/auction/
[iv] ネットワーク効果とは?スタートアップの成長戦略と成功事例
https://ofall.jp/media/article80/#index_id1
[v] オークネット社HP
https://ir.aucnet.co.jp/ja/ir/library/result/main/04/teaserItems3/01/linkList/00/link/0220_Final.pdf?utm_source=chatgpt.com
[vi] KEPPLE(ケップル)社HP
https://kepple.co.jp/articles/i1o80cyyar3
[vii] 折橋 伸哉「人口減少と自動車産業」
https://www.hosei.ac.jp/application/files/3515/7655/5058/DP-16J001.pdf?utm_source=chatgpt.com

 

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