内容
1.はじめに:
2.特許庁別の特許出願件数:
2.1 各国・地域の特許庁別の特許出願件数:
2.2 中国: 製造拠点がある企業は要注意
2.3 米国: 投資家評価が高く、交渉力に
2.4 日本: パリ優先権の第1国出願となる
2.5 韓国: 製造や研究を連携する場合には選択肢
2.6 欧州: 加盟国の特許を1つの手続きで取得
2.7 インド: 今一番注目したい国
3.次回予告:
1.はじめに:
海外特許を検討したい場合、どの国や地域に、どんなタイミングで出願すべきか?
が重要になってきます。
この紹介の前に是非知っておきたい情報があります。
各国・地域の特許庁別の特許出願件数の推移です。
これを知ることが、自社の海外知財検討の第一歩になるはずです。
2.特許庁別の特許出願件数[i]:
2.1 各国・地域の特許庁別の特許出願件数:
下図に示すように、世界の特許出願の合計を100%とし、特許庁別に多い順から合計していくと、実にTop20の合計は96%を超えます。
その内、5庁(IP5)の合計は85%を超えます。
IP5とは、日米欧中韓の知的財産庁が2007年に創設した枠組みです[ii]。
世界の特許行政の大きな流れは、5庁の動きを見ておくことで把握できます。

海外への出願先としては、Top20の中から選べば大きな外しはないといえますが、
単に上位から選ぶのではなく、「自社の事業活動との関係がある国」を選ぶことが重要です。
多く出願されている国=自社が出願すべき国とは限らない点に注意が必要です。
2.2 中国: 製造拠点がある企業は要注意
世界の出願数の約半分近くを中国で占めていますが、これは出願料補助、報奨金、法人税減税などの特許促進政策等により、国策として特許出願に注力してきたからです[iii]。
2008年からの各年についての出願数を居住者と非居住者で区分けしてグラフ化すると、中国は9割以上が居住者、つまり国内出願であることが分かります。
自国市場・製造活動を特許で強固に守ることに繋がりますので、製造拠点がある企業は要注意です。

2.3 米国: 投資家評価が高く、交渉力に
米国は、半分以上が非居住者による出願、つまり米国外からの出願になります。
特許訴訟の件数やその規模は、他の国を圧倒しており[iv]、米国は海外の知財戦略を検討する上で一番最初に検討すべき国の1つです。
米国特許を持つことは、投資家評価が高く、交渉力にもなります。

2.4 日本: パリ優先権の第1国出願となる
日本の特許出願の動向は、本ブログでも採り上げてきました(当時のブログへ)。
長くマイナス成長が続きましたが、2022年を底にしてプラス成長段階に入ったように見えます。
若干ですが非居住者の出願の割合も増える傾向にあります。
外国出願を行う場合に、日本出願を第1国出願として活用することになる場合が多く、国内出願時から海外を意識する意義があります。

2.5 韓国: 製造や研究を連携する場合には選択肢
直近の出願件数自体は日本よりも少ないものの、出願数の成長は堅調であり知財に注力している国の1つです。
製造や研究を連携する場合には選択肢となります。

2.6 欧州: 加盟国の特許を1つの手続きで取得
欧州特許庁(EPO)は、欧州特許制度に加盟している国の特許出願を取り扱います。1つの出願で各国の出願の束として取り扱うことができます。
欧州特許制度は、欧州特許庁に出願することで、複数の欧州諸国における特許権を一括して取得できる制度です。欧州の特徴は、米国と同様、非居住者からの出願の割合が高いことです。
欧州、特にドイツは特許侵害訴訟が多い国として知られています。

2.7 インド: 今一番注目したい国
5庁に含まれていませんが、今一番注目したいのはインドです。
インドは、直近10年の年平均成長率が9.4%、5年間では14.4%と、急激な成長を見せています。
更に注目したいのが、以前は非居住者の出願の割合が殆どでしたが、近年は半分以上が居住者の出願となっており、知財への関心度の高さが伺えます。
ただし、スタートアップ企業にとっては、出願すべきというより、今後の市場性や提携可能性の観点で、検討候補国として念頭に置いておくことが重要です。

3.次回予告:
いかがでしたか。
“特許出願が多い国=競争が激しく注目度が高い国”です。
競争が激しい国ほど、知財で先に守る価値が高いと言えます。
ただし、出願国の優先順位は単純な出願件数に依存するものではありません。
次回では、この動向を踏まえ、「自社の事業モデルに応じた判断方法」をご紹介していきます。
本日もご覧いただきありがとうございました。
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【参考文献】
[i] World Intellectual Property Indicators 2025
https://www.wipo.int/publications/en/details.jsp?id=4822
[ii] 五庁(IP5) | 経済産業省 特許庁
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/ip5/index.html
[iii] SPEEDA | Intellectual Property : Is China the Global Leader in Innovation? | SPEEDA
https://asia.ub-speeda.com/en/intellectual-property-china-global-leader-innovation/?utm_source=chatgpt.com
[iv] 17 Incredible Patent Litigation Statistics [2024 Edition]
https://thehighcourt.co/patent-litigation-statistics/?utm_source=chatgpt.com
前回のブログ:
海外知財を考える(1) ~海外展開していなくても、今から知財を考えるべき理由~
