あの「オニツカタイガー」が独立会社に ~アシックス分社化ニュースにみる急成長ブランドの今~

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※連載「オニツカタイガーとブランド知財」第1回(全4回)

はじめに

2026年6月10日、アシックスが「オニツカタイガー」事業の分社化を発表しました。

オニツカタイガーといえば、古くから馴染みのある方にはスポーツシューズの記憶が、若い方や海外の方にはおしゃれなスニーカーブランドのイメージがあるかもしれません。実はいまこのブランドは、売上高1,365億円(前期比43%増)という驚異的な成長を遂げており、アシックスグループ全体の成長を牽引する存在になっています。

本連載では、このニュースを入口に「ブランドを知的財産として育てる」とはどういうことかを、全4回に分けて考えていきます。第1回はまず、ニュースそのものを整理します。

分社化の中身

発表の要点は次のとおりです。

  • 新会社の名称は「OTグループ」(本社:東京都港区)
  • 2027年1月1日付で稼働開始
  • 資本金3億7,600万円、アシックスの100%出資(完全子会社)
  • 新会社の社長にはアシックス副社長兼オニツカタイガーカンパニー長の庄田良二氏、会長にはアシックス会長CEOの廣田康人氏が就任予定

「分社化」とは、社内の一事業部を切り出して独立した会社にすることです。アシックスグループから離れるわけではありませんが、ブランド戦略や出店判断を親会社の意思決定から切り離し、スピードを上げることが狙いと説明されています。

背景にあるのは数字です。オニツカタイガー事業の2025年12月期の売上高は1,365億円(前期比43%増)、利益率は37.7%。これは世界の高級ブランドでも最上位クラスの水準で、「スポーツ用品の一部門」の枠に収まらない事業規模になっていました。

世界最大の旗艦店が新宿にオープン

分社化発表の1か月後、2026年7月10日には、東京・新宿に世界最大のグローバル旗艦店がオープンしました。

  • 場所:新宿駅東口すぐ(新宿区新宿3-26-11)
  • 店舗面積1,837平方メートル・全4フロアで、世界に約190ある店舗の中で最大
  • ブランドカラーである「タイガーイエロー」の外観で、新宿の新しいランドマークを狙う設計
  • 中2階にはブランド初のアミューズメントエリア(フォトブース、ゲームコーナー、大型カプセルトイ)を設置

注目すべきは、この店が「靴を売る店」ではなく「ブランドの世界観を体験してもらう店」として設計されている点です。シューズだけでなくアパレルやバッグも含む全カテゴリーを揃え、「シューズブランドではなくファッションブランド」という方向性を明確に打ち出しています。

立地についても、世界中から観光客が集まり多様なカルチャーが交差する新宿という場所選びに、訪日客との接点を最大化する狙いがうかがえます。実際、新宿エリアのオニツカタイガーの店舗は、ルミネエスト新宿内や伊勢丹新宿本店内の店舗と合わせて、これで計5店になります。

2027年2月、米国に再進出

もうひとつの大きな発表が、米国市場への再進出です。

実はオニツカタイガーは、2023年に米国からいったん撤退しています(直営店を閉鎖し、公式サイトでの米国向け販売も2023年11月末で終了)。当時は現地の事業会社がアシックス(スポーツ)とオニツカタイガー(ファッション)の両方を運営しており、性能で売るスポーツブランドと世界観で売るファッションブランドの考え方の違いから、意思決定に時間がかかったことが背景と説明されています。

今回の再進出は、2027年2月にロサンゼルスへ約1,822平方メートル——新宿の世界最大店とほぼ同じ規模——の大型店を出すという本格的なものです。分社化(2027年1月1日)の翌月に米国再進出という日程は偶然ではなく、「親会社と一体では動けなかった市場に、独立した新会社として再挑戦する」という一連の設計になっています。

このほか2026年中にも、上海(7月)、名古屋(8月)、ミラノ・ソウル(9月)と、世界のファッション主要都市への出店が続きます。

中小企業・スタートアップへの視点

大企業のニュースですが、次の2点は規模を問わず参考になります。

1. ブランドが独立した「事業」になるほどの資産に育つことがある
オニツカタイガーは、もともとアシックス社内の一事業部でした。ブランドという無形の資産が、独立会社を作るほどの事業価値を持つに至った実例です。

2. 事業の性格が違えば、体制も分ける
米国撤退の教訓は「性能で売る事業と世界観で売る事業を同じ体制で運営すると、意思決定が混乱する」ということでした。複数の事業やブランドを持つ会社にとって、体制設計そのものがブランド戦略の一部だといえます。

まとめ

今回は分社化ニュースの全体像を整理しました。しかし、そもそもなぜオニツカタイガーはここまで成長できたのでしょうか。実はこのブランド、一度市場から姿を消し、四半世紀の休眠を経て復活したという異色の歴史を持っています。

次回は、その「消えたブランドが1,365億円になるまで」の物語と、そこにある「古さを価値に変える仕組み」を掘り下げます。

いつもご覧いただきありがとうございます。
第2回は近日公開予定です。

このニュースをきっかけに、自社のブランドや商標について考えてみたくなった方は、(こちら)からお気軽にご相談ください。

参考文献

  • アシックス公式プレスリリース「Onitsuka Tigerが、世界最大のグローバルフラッグシップストアを新宿にオープン」(2026年7月9日) https://corp.asics.com/jp/press/article/2026-07-09_shijukustore (同内容のPR TIMES版: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000077.000074535.html )
  • TimeOut Tokyo「『オニツカタイガー』の世界最大となるグローバル旗艦店が新宿に誕生」(アミューズメントエリアの中身——フォトブース・ゲーム機・巨大カプセルトイマシン——の出典) https://www.timeout.jp/tokyo/ja/news/onitsuka-tiger-worlds-largest-global-flagship-store-shinjuku-071426
  • FASHIONSNAP「分社化したオニツカタイガーが新宿に世界最大旗艦店 米国も再進出、ロサンゼルスに出店」(2026年6月10日) https://www.fashionsnap.com/article/2026-06-10/onitsuka-tiger-store-opening-strategy-2026/
  • FASHIONSNAP「アシックスがオニツカタイガーを分社化 意思決定スピードを向上」(2026年6月10日。資本金・新会社概要の出典) https://www.fashionsnap.com/article/2026-06-10/asics-onitsuka-tiger-split-up/
  • 時事ドットコム「『オニツカタイガー』を分社化 意思決定加速、ブランド強化へ」(2026年6月10日。約160カ国・約190店舗の出典) https://www.jiji.com/jc/article?k=2026061000518&g=eco
  • アシックス「2025年度 決算説明資料(スクリプト)」P19〜21(売上高1,365億円・利益率37.7%の出典) https://assets.asics.com/system/libraries/4138/0218%202025%E5%B9%B4%E5%BA%A6%20%20%E6%B1%BA%E7%AE%97%E8%AA%AC%E6%98%8E%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%88%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%97%E3%83%88%EF%BC%89.pdf
  • 日本経済新聞「アシックス『オニツカタイガー』、米国に再進出 27年にも直営店」(2025年7月7日。2023年の米国直営店閉鎖の記述は無料部分で確認可) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF073D90X00C25A7000000/
  • Onitsuka Tiger米国公式サイト「Notice of end of sales」(米国向けEC販売を2023年11月末で終了した旨の公式告知) https://www.onitsukatiger.com/us/en-us/end-of-sale

 

    • ※本記事は公開されている報道・行政情報をもとに作成したものであり、個別の法的判断を示すものではありません。

 

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